私が好きな海外の味というと、今インド料理を少し脇に置かせてもらうと、和食、中国料理、韓国料理、ベトナム料理が好きです。ということは、東アジアの料理が好きであるということが言えるのかな、と思います。
これらの国は、中国の影響が強かった地域です。しかし、中国の影響を受けている部分と、独自な発展を遂げている部分とあり、複雑にからみあって多様化しているとも思います。
日本は、文化的には中国の影響を受けながらも、中国料理のような火食文化とは異なった道を歩んだと思われます。生食などはその典型です。
ベトナム料理などを見ても、中国の影響を受けながらも独自な展開をしています。このあたりは、生態系にも根ざしていますが、民族独自の知恵にもよるところが多いと考えられます。
私の恩師が、音楽家の武満徹氏と話した時に、「民謡はその民族固有の性格が強く、それはなぜか説明できない」、ということをお話しされていたと話していましたが、料理も独自発展部分があると考えられます。
私が日本人だからかもしれませんが、これらの東アジアの料理の共通項を考えるときに思うのは、米が食文化の中心にある、かなり中核を占めている、という点です。しかも、この地域は、米作の収穫が豊かで余剰を生み出し、国家としても確固たる体制、王朝を作りだしました。
もちろん以前述べたように、中国は小麦文化と米作文化が共存しています。また、不思議な一致で、インドでも、北は小麦中心、南は米中心という側面があります。インドでは、そこにスパイス文化が加わってきます。まさにマンダラの世界です。国家の勢力範囲が広いと生態系も多岐にわたるからでしょう。
東アジアの食文化を考えるとき、米を抜きにしては論が成り立たないといってもいいほどです。また、民族独自の知恵、歴史、異文化との交流、生態系、こうしたものが融合してできてくると思われます。
今では、ボーダレスな人の移動やメディアの影響も考慮に入れなければならないでしょう。それが新しい要素を加えていきます。
料理をこうした広い文化的視点で見ることも、たまには面白いと思います。