ニューヨーク駐在時代、私と妻の友人、知人にユダヤ人が結構いました。大体、私の妻はミュージカルのプロジェクトのお手伝いをしており、そのボスがユダヤ人だったので、自然とユダヤ人が周りに集まってました。
それと、私の知人のうちの一人は、大学教授だったのですがやはりユダヤ人で、その方のいとこがある有名なミュージカルのマネジャーをやっていて、招待されて行ったこともありました。芸能関係は結構ユダヤ人が多かったように思います。
彼の奥さんは、私と一緒に働いていました。私が採用して雇っていたのです。その奥さん経由で彼と知り合い、夫婦ぐるみの付き合いになったというわけです。
あるとき、奥さんの方が、ユダヤ暦のお正月なのでお休みを欲しいと申し出たので、私は了解し、休暇をあげました。
お休みの前日、その旦那さんもオフィスに来て、二人でユダヤのお正月のことを話してくれました。すると、ユダヤのお正月の食べ物ですといってクラッカーのようなものをくれました。食べてみると味はすごく薄味で淡白な味でした。
彼は、「これは、マッツアというユダヤの食べ物です。旧約聖書にある出エジプト記の中で、ユダヤ人がエジプトから脱出するときに、パンを発酵する時間がなかったので、こうした発酵させないパンを食べました。それに由来しています」と説明してくれました。
日本でも、歴史のある食べ物はあると思いますが、出エジプトというと2000年レベルの話です。ユダヤ人の歴史観と食べ物の伝統の長さに驚愕しました。世界の民族と食文化の多様さ、歴史には改めて感動しますし、驚かされます。
決して美味しくてたまらないというものではないですが、それによって伝統と歴史を思い出し、民族の紐帯を確認するのだとも考えられます。
ちなみに、彼はユダヤの食のルールに従って、豚肉は食べません。いわゆるコーシャーというユダヤの食べ物規定による清潔とされる食品を食べます。イスラム教徒と同じで、豚肉を調理した包丁すら使用を避けようとします。
面白いのは、その彼、結構ショートテンパー(短気)のために、日本食レストランなどに行くといつも、鶏の照り焼き定食を注文していました。注文するとすぐ出てくるからだそうです。日本の照り焼きはOKなようです。
その彼のおかげで、某有名証券会社の会長にも会うことができ(もちろんユダヤネットワークが背景にありますが)、直筆サインの入った著書をもらったこともあります。
米国でユダヤ人の文化、食文化に触れたのは貴重な経験でした。