餃子の主役は皮?具?
皆さんは、餃子が好きでしょうか?ひょっとしたら、聞くだけ野暮かもしれません。餃子はいまや、日本の国民的食べ物といってもいいくらい日本人の食生活に溶け込み、好まれていると思います。もっとも、中国の餃子とは、少し違いますが、うまく日本化し、美味しいものになっています。
もう一つ質問です。餃子は、皮が主役でしょうか?それとも、具がメインでしょうか?この質問への回答は賛否両論分かれると思います。以下で、この問いに関して考えてみたいと思います。
餃子パーティーでの出来事
話しは、筆者の経験談になります。筆者は、大学院に入りかなり勉強した時期がありました。80年代の終わり頃でしたが、その頃中国や台湾からの留学生が多く、私がいた大学院の後輩にも中国、台湾の後輩が多くいました。その後輩たちを慰労するために、餃子パーティーを催すことを思いつきました。自分としては、中国でも食べ歩いた経験から、餃子作りには自信を持っていました。餃子は中国で見聞きしたように手でこねて作りました。一方、具は豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ネギ、生姜などですキャベツ以下細かく刻み、醤油、酒、ごま油、胡椒などで味付けし、餡の出来上がり。
キャベツか?白菜か?
さて、と張り切って作り始めましたが、参加していた友人がその餃子は本当の餃子ではないと、台湾人の後輩が言っていると伝えてきました。私としては納得できないので、その後輩のところに行き、率直に訳を聞いてみました。すると、その台湾の友人によれば、餃子にはキャベツを使わない、という見解でした。中国のレストランの厨房で見てきたつもりでしたが、日本の料理本の影響なども無意識のうちにあって、そうしていたようです。その友人によれば、キャベツではなく白菜を使うとのことでした。一方、中国から来ている後輩は、ニコニコしながら、中国ではニラだけ使います、と言いました。
それぞれの話しを聞いていたら、何が本当かわからなくなりました。ただ、その台湾の友人が茹でる際に一言、二言付け加えたのです。餃子を沸騰した湯に入れたら浮かんで来ます。それを3回やったら火が通っていますと。
魯山人からのヒント
その後、何かもやもやしたものを抱えながら餃子のことを引き続き考えていました。あるとき、北大路魯山人の本を読んでいたらこんな文が目に留まりました。「出汁巻卵は出汁を食べるものだ」と。それを読みふと閃きました。餃子は、皮が主役であり、具は脇役ではないかということ、がです。
だから、具については、中国ではニラを中心に入れ、台湾は白菜を入れる傾向がある。ただ、具は薬味的なものであり、基本何を入れてもいいのではないか?事実、その後中国でトマトが入った餃子を食べましたし、台湾人などが言うようにニンニクを入れないと言う原則すら破ってしまう餃子を食べたことがあります。つまりは、餃子は、中国の華北地方を中心とした粉食文化が基礎になっており、メインは皮なのではないかと気づいたのです。
文明としての料理
ただ、中国、台湾の友人たちを擁護すると言うか、中国文明のライフスタイルの確立している点については言及しておかねばなりません。それは、先程の3回浮かんできたら火が通っているという原則が分かっている点です。どのような人でも、どのような民族でも、この原則を守れば料理が作れるというシステムが確立していることこそが、文明力といってよいと思います。イタリアのパスタのアルデンテも食文化の中のシステムであり、文明力といってよいと思います。
餃子を通じて、中国、台湾の友人と、そして魯山人から多くのことを学ぶことができました。しかし、中国の粉食の文化は奥が深いと思います。