日本の食文化におけるマクロビの位置

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日本が生んだマクロビオティック

桜沢如一。さくらざわゆきかず、と読みます。この名前をご存知の方は少ないかもしれません。マクロビオティックの大成者で唱導者、というとご存知の方が増えるかもしれませんが、それでもまだ少ないかもしれません。彼は、食養法の創設者、石塚左玄の業績を受け継ぎそれを発展させて海外に知らしめました。海外ではジョージ・オーサワの名前で知られています。その影響はかなり強く、アメリカにおける60年代のヒッピームーブメントを始め、アーチスト、ミュージシャン、俳優・女優など多くの分野の人々に影響を与えました。ジョン・レノン、前衛音楽のジョン・ケイジなどにも影響を与えています。

マクロビ、マクロビと今は言われ、認知度も以前よりはさらに上がったかと思われます。そして、マクロビオティックは、欧米でできたものと思われがちですが、実は桜沢如一という日本人が体系化したものです。

最近まで知らなかったのですが、桜沢は、お金を持たずフランスに渡り、著作でもって生計を立て、マクロビオティックの普及を目指しました。日本においては、戦時中も反戦的な態度を貫き通しました。こんなすごい人がいたのですね。まさに明治生まれの気骨者、といった感じです。

桜沢如一の基本思想

さて、桜沢如一のマクロビオティックとその考え方を簡単に見てみたいと思います。すでに触れたように、彼の考え方は石塚左玄(いしづかさげん)の食養法を踏まえたものでした。そのポイントは以下です。

食がすべてのもとであり、体、心はそれがあって初めて成り立つ。体は自然から離れたものではない、そのためその土地に根ざした物を取るのが良い。また、人間は穀物を取るように本来できている。たべものを摂る際は、陰陽の調和に基づき、すべてを摂取すべきである、というのがエッセンスかと思います。石塚左玄は洋食を中心にしていたようですが、桜沢如一は、それを日本食の観点から発展させていきました。

そしてその考え方をフランスなどで発表し、少しずつ受け入れられていきます。彼を最初からに認めたのはフランスをはじめとした外国でした。

桜沢が説いたマクロビオティックは、簡単にまとめていうなら、陰陽五行に基づく玄米を中心にした自然食と言っていいかと思います。特に強調しておかなければならないのは、食は人間が存立する根源であり、体や精神はその上に成り立つものであるとした徹底した思考です。

彼の唱えたマクロビオティックは、フランスばかりでなく、アメリカのヒッピームーブメントや禅文化と一緒になり拡大し、今では多くの支持者を得ています。欧米ばかりでなく、インドやベトナムにまで広まりました。日本食はいまや世界各国に受け入れられてきていますが、食をめぐる思想についても桜沢のおかげでかなり前から広まってきていたといってよいでしょう。

残念なことに、すでに触れたように、彼は逆輸入の形で紹介され、それがためにマクロビオティックは外国のものだと思って人も多く、ちょっぴり残念なことかと思います。

ここで言いたいのは、上記のようなことばかりではありません。前回の魯山人が、食を自然の恵みからの料理を芸術にまで高めたなら、桜沢は、その大地と人間の接点を、人間を成り立たせる根本原理である食として捉えて、宇宙原理と一体化させ、生きるための哲学にまで高めたと言えるでしょう。二人の巨人が重層構造のように日本の食文化を捉えていることは、私は、驚異的発見と言ってもよいと感じるのです。

実は、更に食物を生み出す大地の思想を掘り下げた人物がいました。福岡正信という人です。

のブログでは、福岡正信について触れてみたいと思います。

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